ホーム の中の 最近の法改正 の中の 平成23年改正

近年、通常実施権に関する登録事項の開示の制限や、特定通常実施権登録制度の整備等、通常実施権登録制度の活用を促進するための法改正が行われたものの、依然として通常実施権を登録することは困難であった。
そこで、通常実施権を適切に保護し、企業の事業活動の安定性・継続性を確保するため、通常実施権に当然対抗制度(登録を必要とせずに、通常実施権者が自らその権利の存在を立証することにより第三者に通常実施権を対抗することができる制度)を導入することとした。併せて、通常実施権登録制度を廃止した上で、通常実施権登録制度を前提とした規定について、必要な改正を行った。

特許法第99条

通常実施権は、登録その他何らの要件を備えなくても、その発生後に特許権や専用実施権の譲受人や、専用実施権の設定を受けた者に対して対抗することができることとした。また、この改正により許諾による通常実施権についても当然対抗制度が導入され、第三者対抗要件が法定通常実施権と共通となった。

特許法第27条

当然対抗制度の導入により、通常実施権及び仮通常実施権の登録制度は不要となるため、通常実施権等に関する事項を特許原簿の登録事項から削除し、通常実施権等の登録制度を廃止した。
なお、現行法では登録した通常実施権又は仮通常実施権を有する者や登録した権利を有する者に一定の権利を与える等、通常実施権等の登録制度を前提としたいくつかの規定が存在するが、通常実施権等の登録制度を廃止することに伴い、これらについても必要な改正を行った

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特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決の登録後は、何人も同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができないと規定されている。
しかし、請求人の主張の巧拙により審決の結論が変わる可能性が否定しきれないこと、その審判の審決の当否を裁判で争う権利が制限されることは、不合理であるという指摘がされている。
一方、ある特許について無効審判請求不成立審決が確定していた場合、当該特許権の侵害訴訟において同一の事実及び同一の証拠により特許法第104条の3に基づく抗弁(無効の抗弁)が認められたとしても、先の無効審判と同一の事実及び同一の証拠によっては何人も無効審判を請求できない。そのため、侵害訴訟の判断により実質的に利用できない特許となったとしても、これを対世的には無効にすることができず、特許原簿上も残されたままとなるため公益上の問題が生じ得ることとなっている。
そこで、無効審判の確定審決の第三者効については廃止することとした。

特許法第167条

第三者効は廃止するが、先の審判の当事者及び参加人は審決が確定した後に同一の事実及び同一の証拠に基づいて紛争の蒸し返しができることは不合理である。よって、これらの者についての一事不再理効は残すこととした。
また、第三者効を廃止し、審決の効力が審判の当事者及び参加人にのみ及ぶとした場合、登録がなくとも審決が確定したことを知ることができるから、「審決が確定したとき」に審決の効力が発生することとした。 なお、実用新案法、旧実用新案法、意匠法、商標法については、特許法第167条が準用されているが、特許法における考え方がそのまま妥当するため、特許法の改正に伴い、同様の手当てをすることとした。

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① 国際出願に係る手数料の見直し

海外での競争力強化に向けて外国出願支援が重要であるが、政策的観点から料金を安価に設定しようとしても、従来の国際出願法で国際出願に係る手数料は実費を勘案して定めることとされているためできない。 そこで、我が国が設定する送付手数料、調査手数料、予備審査手数料及び追加手数料を引き下げることにより海外での特許取得の手続を支援する必要がある。

② 意匠登録料

近年、デザインによる市場競争力確保の手段としてロングライフデザインが重視されているが、累積的に増加する意匠登録料の後年度負担が重いため、権利維持への投資を抑制せざるを得ない状況を招来している。 また、我が国の意匠登録料は、諸外国の料金体系と比較して、後年度の負担が高額である。そこで意匠登録料については、ロングライフデザインの適切な保護を促進する観点から、諸外国と比して負担の重い第11年目以降の意匠登録料を引き下げることとした。

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減免対象の拡大や普及活動等の取組みにより、平成20年度の減免制度の利用実績は増加している。しかし、従来の制度では減免対象範囲が狭いこと、他者の発明(特定承継した発明)を活用した場合減免対象となっていないこと、特許料の減免の対象期間は第1年から第3年と減免効果が小さいといった問題がある。そこで以下の3点について改正を行った。

職務発明要件・予約承継要件廃止

研究開発体制の実態を踏まえた適切な権利保護を図るため、特許を受ける権利及び特許権を譲渡(特定承継)された者を含め減免対象とする。

減免対象者の拡充

特許法上の減免対象者を、資力に乏しい者として政令で定める要件に該当する者から、資力を考慮して政令で定める要件に該当する者と改める。

特許料減免期間の延長

特許法第109条等に規定された特許料の減免期間を、従来の第1年から第3年の減免期間に加え、第4年から第10年の特許料についても減免期間とする。

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外国語書面出願及び外国語特許出願の翻訳文提出期間を徒過した場合について、諸外国では救済手続が設けられている一方、我が国では一切救済手続が設けられていない。そこで新たに救済手続を導入する必要があった。 また、特許料の追納期間を徒過した場合、2段階目の救済における回復の要件は民事訴訟法の追完の規定に倣って極めて厳格に解されており、救済の要件を緩和する方向での改正が必要だった。

そこで、手続期間を徒過した場合の救済手続を整備する改正を行い、救済の要件は特許法条約の規定に従うことにした。
具体的には、外国語書面出願及び外国語特許出願の翻訳文の提出については期間徒過に正当な理由があったときは期間経過後1年以内であって理由がなくなってから2月以内であれば救済手続による翻訳文の提出を認めること。 また、特許料の追納については、救済を認める要件を来の「その責めに帰することができない理由」から「正当な理由」に緩和するとともに、救済手続が可能な期間を上記翻訳文提出の救済手続と揃える形で拡大した。

翻訳文の提出期間徒過の救済手続の創設

特許法第36条の2,特許法第184条の4
・救済を認める要件について
PLT第12条では、加盟国に対し手続期間を徒過した場合の救済を認める要件として「Due Care(いわゆる『相当な注意』)を払っていた」又は、 「Unintentional(いわゆる『故意ではない』)であった」のいずれかを選択することを認めている。 我が国においては、諸外国の制度を前提に第三者の監視負担に配慮しつつ実効的な救済を確保できる要件として、「Due Care」を採用することとした。 そして、具体的な条文の文言は「翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるとき」とした。
・救済手続を認める期間について
PLT規則第13.45は、救済手続を認める期間について少なくとも「理由がなくなった日から2月以内(期間経過後1年以内)」という期間を規定してい る。PCT において規定する権利の回復などにおいても同様の期間が採用されている。よって、我が国も新たに救済手続を導入するにあたり、この期間に従うこととした。

【関連する改正事項】

特許法第184条の9,特許法第184条の11,特許法第184条の12,特許法第184条の12の2,特許法第184条の15,特許法第184条の16,特許法第184条の17

特許料の追納期間徒過の救済要件の緩和

特許法第112条の2
特許料の追納期間徒過の救済手続をPLT第12条の「権利の回復」に整合した制度とするため、救済を認める要件について「その責めに帰することができな い理由」を緩和し「正当な理由」とした。また、救済手続による納付が可能な期間を拡大し「その理由がなくなつた日から二月以内でその期間の経過後一年以内」とした。

【関連する改正事項】

実用新案法第33条の2,意匠法44条の2,商標法第21条,商標法第65条の3

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製品が市場に投入されてから、成長、成熟、衰退までの製品ライフサイクルの期間が短くなる傾向にあることから早期の商標権取得へのニーズが高まっている。このような状況下で商標権消滅後1年間登録を認めないことによる権利化の遅延という弊害が顕著化している。 そこで早期の権利取得というユーザーのニーズに応える観点から、商標権が消滅した後に1年間の期間経過を待たずに他人が商標登録を受けることを可能にするため、商標法第4条第1項第13号を廃止した。

商標法第4条

商標法第4条第1項第13号の廃止により、商標権取消決定の確定及び無効審決の確定、商標権の放棄の設定登録後は、直ちに後願商標の登録査定が可能となった。 ただし、商標権の存続期間が満了した場合には、制度上、商標権が確実に消滅するわけではなく、存続期間満了後でも、満了時にさかのぼって更新されることがあることから、先願既登録商標と同一又は類似の関係にある後願商標の過誤登録を招かぬよう存続期間満了後の更新申請の有無を見極めることが必要である。
一方、商標法第4条第4項は、例外措置を存置する必要がなくなるため削ることとした。

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近年、複数の企業や大学等が共同して技術開発や製品開発をすることが一般化しているため、他人の発明であることを承知の上で出願し特許権を取得するケースのほか、研究成果である発明の扱いについて予め合意をせずに共同開発を始めてしまった等の結果として、特許を受ける権利の帰属が不分明なまま、一方が全て自己の発明であるとして出願し、特許権を取得してしまう等のケースが生じやすい状況にあるといえる。
このように、近年冒認等が生じやすい状況にあるにもかかわらず、現行法の下では、真の権利者が自らの発明に係る特許権を取得する手段が十分とはいえず、産業界等からも、冒認等に関する真の権利者の救済手段として、真の権利者による特許権の移転を認めることが望まれている。
以上を踏まえ、真の権利者が自ら出願していたか否かにかかわらず、真の権利者が、冒認出願等に基づく特許権の特許権者に対して、その特許権(共同出願違反の場合は、その持分)の移転を請求することができる制度(移転請求制度)を導入するとともに、当該制度の導入に伴い必要な改正を行うこととした。

特許法第74条(新設)

冒認出願等について特許された場合、真の権利者(特許を受ける権利を有する者)は、冒認出願等を通じて発明が公開されたことにより産業の発達に寄与したと評価することができ、また、その寄与は、発明の内容自体に起因するものであり、誰が出願したかによって変わるものではないから、真の権利者が自ら出願していたか否かにかかわらず、特許権の移転を請求できることとした。また、移転請求権の行使により、特許権の移転の登録がされた場合には、当該特許権は初めから真の権利者に帰属していたものとみなすこととした。

【関連する改正事項】
実用新案法第17条の2(新設)、意匠法第46条、商標法第44条

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現行の新規性喪失の例外規定の適用対象は、特許を受ける権利を有する者の意に反して新規性を喪失した発明の他は、試験の実施、刊行物 への発表、電気通信回線を通じての発表、特許庁長官が指定する学会での文書発表、又は特定の博覧会への出品によって新規性を喪失した発明に限定されて いる。そのため、発明の公開態様の多様化に十分に対応できなくなっている。したがって、発明の公開態様の多様化への対応等の観点から、 今回の改正では、同規定の適用対象を「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」新規性を喪失した発明にまで拡大することとした。
さらに、特許を受ける権利を有する者による内外国特許庁・国際機関への出願行為に起因して特許公報等(内外国特許庁・国際機関が発行する特許公報、 実用新案登録公報等)に掲載されて新規性を喪失した発明については、適用対象とならないことを法律上明確化することとした。

特許法第30条

今回の改正により、新規性喪失適用対象を限定列挙する方式をやめ、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」新規性を喪失した発明にまで拡大することとした。 これは、新規性喪失の例外規定の適用対象とされるべきと考えられる公開態様によって新規性を喪失した発明を、網羅的に対象とすることを目的としたものである。 一方「(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)」と規定することにより、特許を受ける権利を有する者による内外国特許庁・国際機関への出願行為に起因して特許公報等(内外国特許庁・国際機関が発行する特許公報、実用新 案登録公報等)に掲載されて新規性を喪失した発明は、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができないことを法律上明確にすることとした。
新規性喪失の例外規定の適用を受けるために必要な手続については、特許法第30条第4項で規定されていたが、今回の改正により、従来の特許法第30条第2項で規定されていた内容を同条第1項に繰り上げ、また従来の同条第1項及び第3項で限定列挙されていた新規性喪失の例外規定の適用対象を、同条第2項で包括的に規定することとしたことに伴い、同条第3項で規定することとした。

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現行法では、審決取消訴訟提起後に訂正審判が請求され、特許無効審判においてさらに審理させることが相当であると認められるときには、裁判所の実体的な判断が示されることなく、決定をもって差し戻すために審決を取り消すことができるとされている。このように、裁判所の実体的な判断が示されずに裁判所と特許庁との間で事件が往復することは、手続として非効率であるとともに、裁判所の実体的な判断を得ることのない訴訟に関して手続上及び金銭上の負担が生じ、当事者(特に、審判請求人)に無駄な負担を強いている。また、裁判所と特許庁との間での事件の往復にはある程度の期間を要し、審決取消訴訟を二度、三度提起した場合にもその都度訂正審判を請求できることから、審理が遅延し、ひいては審決の確定が遅延して争いがなかなか決着しない問題、キャッチボール現象の解消が望まれている。
以上の点からキャッチボール現象は解消すべきであるが、一方で、現行法下の審決取消訴訟提起後の訂正審判には、審判合議体が審決において示した特許の有効性の判断を踏まえ、どのような点について訂正をすればよいかを明確に把握した上で特許権者が訂正をできるという利点がある。このような利点は許権者に対して確保すべきであるから、特許無効審判の手続において、審判合議体が特許の有効性の判断を当事者に開示し(審決の予告)、特許権者がこれを踏まえて訂正の請求をすることができるようにした上で、審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求は禁止することとした

特許法第126条

改正条文では審決取消訴訟提起後に訂正審判を請求できるとされている文言(特許法第126条第2項ただし書)を削除し、特許無効審判の審決が確定するまでは、訂正審判を請求できないこととした。

特許法第164条の2(新設)

現行法下において、審判合議体が審決において示した特許の有効性の判断を踏まえて訂正ができるといった特許権者の利点は、審決の予告をして被請求人(特許権者)に訂正の機会を付与することによって確保されている、 そこで審決の予告の内容や審決の予告が出される時期については、審決と同様「事件が審決をするのに熟した場合」とし、その他詳細な事項については特許法施行規則に規定した

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特許権侵害訴訟等の紛争解決機能や企業経営の安定性等の観点から問題があるとの指摘を踏まえて、特許権侵害訴訟等の当事者であった者は、当該特許権侵害訴訟等の判決確定後に、特許を無効にすべき旨の審決又は訂正をすべき旨の審決であって政令で定めるものが確定したことを再審の訴えにおいて主張できない旨を定め、再審を制限することとした。
さらに、特許権侵害訴訟等に附随する仮差押命令及び仮処分命令の結論も覆ることのないようにする必要がある。そこで、仮差押命令及び仮処分命令の債権者(特許権者)に対する損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟においても、特許権侵害訴訟等の当事者であった者は特許を無効にすべき旨の審決が確定したこと等を主張することができないこととした。

特許法第104条の4(新設)

本条は、再審の訴えにおける主張を制限する規定である。特許無効審決や延長登録無効、審決訂正認容審決において、損害賠償請求及び不当利得返還請求を目的とする訴える主張を制限している。

特許法第104条の3

本条は、延長登録無効の抗弁に関する規定である。

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審決の確定及び訂正の許否判断については、特許法に明文の規定がないため、裁判例で示された解釈に基づいた運用が行われている。しかし、特許無効審判が請求されていない請求項についての訂正の請求における訂正の許否判断や、複数の請求項に関連する明細書についての訂正の請求における訂正の許否判断、訂正審判における訂正の許否判断に関しては、裁判例で示された解釈外であること、下級審での解釈が分かれていること等から、これを請求項ごとに扱うのか一体不可分で扱うのかが不明確になっていた。 したがって、特許無効審判を請求項ごとに請求できるとする特許無効審判制度の基本構造は維持しつつ、明細書等の一覧性の確保といったわかりやすい公示に一定の配慮をした上で、特許無効審判における訂正の許否判断及び審決の確定を、請求項ごとに行うための改正を行うこととした。
また、明細書の訂正を許容することとした上で、明細書の一覧性を確保するため、明細書の束の発生を極力防ぐ手当てをすることとした。

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